算数を教えていると、中にはミスを頻発する生徒も、もちろんいます。ミスの原因は色々あるのですが、最近見つけた特徴の一つに、「公式を覚えるために暗記に頼りすぎ」ということがありました。
例えば、小学生の頃、誰しも一度は速さの公式というものに触れたと思います。「距離=速さ×時間」というものですね。先日とある生徒が、速さを求めるのに、距離×時間をしていました。
もちろん、その生徒は速さの公式を覚えているけれど、その時は何か勘違いでミスってしまったということです。
暗記に頼るとこういうミスが出てきます。公式をど忘れするとか、ちょっと曖昧になって、微妙に公式とは違うことをしてしまう、などです。
これを「うん、じゃあこの公式はしっかり覚えておこうね」というだけだと、また同じようなミスを繰り返すと思います。
じゃあこのようなミスを減らすにはどうしたらいいんでしょうか。
公式ではなく、定義を覚える
例えば、先ほどの速さの話ですが、速さは公式を覚える必要は全くありません。
- 時間には3種類ある。「秒速」「分速」「時速」
- 秒速は1秒間に進む距離を、分速は1分間に進む距離を、時速は1時間に進む距離を表す
覚えるのは上記のような、速さの定義だけでいいです。
秒速が1秒に進む距離だと知っていれば、10秒で進む距離を聞かれた時に、それを10倍すれば良いということは、容易にわかることです。
速さと道のりから時間を求める場合も、道のりを1秒間に進む距離で割れば、必要な秒数が出てくることも自然と理解できます。
原理を理解する
高気圧から低気圧に風が吹き出すことはみなさん知っていると思います。
受験の基礎知識ですが、これを間違える生徒が時々います。低気圧から高気圧に風が吹くと勘違いしちゃうんですね。そのような生徒ももちろんこの知識を知ってはいるのですが、記憶が曖昧でミスっちゃった、そんなことがあります。
こういうミスは原理を知らないから、記憶が曖昧になってミスってしまうのです。
上記の気圧の話でいうと覚えることは、気圧の定義だけです。
- 気圧とは、空気がどれだけ密集しているかである。気圧が高いと空気がぎゅうぎゅうに密集していて、気圧が低いとスカスカな状態を表す。
定義を元に考えていけば、気圧と風の関係は簡単に導き出せます。
あなたが満員電車の中にいることを想像してください。ぎゅうぎゅうです。しかし隣にスカスカの車両があったらどうするでしょうか?
スカスカの車両に移動するでしょう。
空気も同じです。ぎゅうぎゅうからスカスカに移動していきます。だから高気圧から低気圧の方に風が吹き出すのです。
原理を簡単に理解できるものは原理を覚えた方がいいです。その方が記憶も定着するし、万一知識を忘れてしまっても、自分で考え出すことができます。
リアルな場面をイメージする
速さに間することで重要なことの一つに、「距離が一定の場合、その距離を進むのにかかる時間は、速さの比の逆比になる」というものがあります。
これを丸暗記している人がいます。
とある生徒は、記憶がこんがらがって、「距離が一定の時に、その距離を進むのにかかる時間は、速さの比と同じ」と勘違いしていました。
暗記に頼るからそういうことが起きてしまいます。
これは少しリアルな場面を想像すれば簡単に導けることです。
家から学校に行く時に、いつもの2倍の速さで歩けば、かかる時間はどうなるだろうか?と想像してみます。半分の時間で行けることは小学校低学年でもわかる話でしょう。
ちょっと想像すればわかることを暗記する必要はありません。むしろ丸暗記するとミスが増えます。
以上 、算数・理科の問題を例に解説しましたが、要点はその公式になる理由を理解しよう、ということです。
他には、
- 濃度の公式
- 湿度の公式
- 抵抗の公式
- 割合の公式
などなど、まだまだありますが、丸暗記している生徒がいて、覚えなくてもいいというか、むしろ暗記するとミスるよと思うことが多いです。
社会でも同じこと。時間が許すならば、自分が感じたなぜを見逃さずに調べることが記憶の定着に繋がります。天智天皇は大化の改新で、なぜ公地公民という方針をとったのでしょうか?
大化の改新前の時代は蘇我家の権力が強くなりすぎて、天皇がないがしろにされていました。天皇ラブの家来ももちろんいて、そんな人たちは蘇我家のことを快く思っていませんでした。
中臣鎌足も天皇ラブの人で、遣唐使として唐に留学した学者から、唐の最先端の政治体制(皇帝を中心とした中央集権国家)を学び、唐のような天皇を中心とした国家体制にしたいと思ったのです。
そして蘇我氏を殺し、天智天皇を即位させ、天皇中心の国家=律令国家を作ろうとしました。天皇中心だから、土地や人民は天皇のもの、というわけです。
律と令というのは法律です。律は刑法で、令はそれ以外の法律を指します。天皇中心の国家にするために、緻密に法律を整備したのですね。その法律を律令と呼んだので、律令国家という呼び名になっているわけです。
以上、暗記に頼らずに公式を頭に入れましょう。そのためには、公式ではなく定義や原理を覚えましょう。自分が感じた素朴な疑問を無視せずに、ちゃんと調べましょう。というお話でした。
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