中学受験の算数って特殊ですよね。中学生が解くような問題でも方程式は使わないですし。一般の方が教えるのはなかなか難しいと思います。
私が中学受験生の家庭教師をする中で、算数の教え方には特に自信があって、受け持った全ての生徒に、今までで一番わかりやすいと言われてきました。
自分としては、教え方について、特に意識していることはなかったのですが、 他の先生方の教え方を知る機会が何度かあって、ここが自分は違うなぁと感じる部分はあったので、ご紹介します。
それでは、苦手な子にも理解されやすい中学受験算数の教え方を3つのポイントに分けて説明していきます。
ポイント①図を書くまえに言葉でイメージさせる
つるかめ算の説明を初めて受ける生徒に、いきなり定番の面積図を書いて説明する方がいます。でもつるかめ算を初めて習う中学受験生からすれば、「え、なんでその面積図かくの?」という疑問が湧き上がること間違いなし。そこで、「いいから覚えて。こうやって解くものなんだから。」と言ってしまうと、その子は公式を単純適用すればいいレベルの問題しか解けなくなってしまいます。応用がきかない。
それで、まずは言葉で簡単にイメージさせます。長々と説明しても聞いてくれないので、あくまで短く簡潔に。子供への質問を混ぜて集中力を保つことを意識しながら説明します。
短く説明することの重要性は過去記事で説明しているのでよかったらご参照ください。
具体的に説明していきます。初めてつるかめ算を習う中学受験生に、こんなつるかめ算の問題を説明したことがあります。
「1本100円の鉛筆と1本160円のシャーペンを合わせて20本かいました。金額は全部で2,900円でした。シャーペンは何本かいましたか。」
以下、実際に私が駆け出し中学受験生に行った説明。
私「これね、買った物が2種類あるから複雑に感じるんだ。なのでまずは、もし1種類だったら、と仮定して考えよう。例えば20本全部鉛筆だったら金額は何円になるだろう?」
生徒「100円×20本で2,000円」
私「そうだね、でも実際の金額はいくら?」
生徒「2900円」
私「その差は900円だね。どうして差が生まれたんだろう?」
生徒「そりゃ本当は160円のシャーペンも買っているからね」
私「そうだね。全部100円と仮定したけど実際は160円のシャーペンもあるんだね。1本の金額の差はいくらだろう?」
生徒「60円」
私「うん、そうだね。そして合計だと金額の差は900円でした。じゃあシャーペンの本数わかる?シャーペン1本につき、60円の差が生まれるということだから・・・」
生徒「900÷60で15本か」
私「そうだね」
という基本の流れを口頭で説明します。
そのあと、面積図のやり方を教えます。なぜ面積図を書くのかを説明することが大事です。
私「今のやり方を図で解く方法もあるよ。難しくて頭の中で考えられない時に使うと良い。でね、今無意識だけど(一本の金額)×(本数)=(金額)っていう関係を使ってたよね。この関係を図で表したい!どうすればいい?」
生徒「・・・(考え中)」
私「図形関連で掛け算を使う公式なかったっけ?」
生徒「・・・(考え中)」
私「(たて)×(横)=(面積)じゃん」
生徒「あ、ほんとだ」
私「てことで、長方形の面積を使うとうまくいくんだよ」
(長方形を書く)
私「でね、たてに一本の金額を書いて、横を本数とすると、面積は何になるだろう?」
生徒「金額か」
私「そうだね。これで(一本の金額)×(本数)=(金額)っていう関係を図に表すことができました」
という具合になぜ面積図を使うかも説明します。そのあとは面積図を使った普通のつるかめ算の解き方を説明します。
このように、まずは口頭でイメージさせることで、生徒に解き方の概略をインプットしてから、図を用いて詳しく解き方を説明するのが良いです。
いきなり細かい説明をされてもすっと頭には入らないものです。出来るだけ概略からはじめて詳細を説明していく、ということを心がけましょう。その結果、いきなり図では説明せずに、言葉で軽くイメージさせるという方法にたどり着くのです。
ポイント②公式は覚える前にまず理解させる
公式は単純に暗記させるのではなく、できるだけ導き方を理解してもらいます。その方が公式の暗記ミスが減るし、応用が聞くからです。
例えば速さの公式がありますね。速さ×時間=距離、というものです。
学校では呪文のようにそのまま覚えさせられますが、中学受験生にはどうしてそうなるのかをちゃんと理解させるべきです。
速さの定義がわかれば、公式は覚えずとも使えるようになります。
私が実際に駆け出し中学受験生に行った説明はこちら。
私「まず速さの説明だけど、時速って聞いたことある?」
生徒「あるよ。車で見たりする」
私「そうそう、それ。時速ってね、1時間に進む距離を示してるんだ。例えば時速40kmと言えば、そのスピードで1時間走れば40km進みますよっていうこと。じゃあ1分で進む距離や、1秒で進む距離ってなんていうと思う?」
生徒「・・・わかんない」
私「分速とか、秒速とか。『時』の部分を『分』とか『秒』に変えるだけだね」
生徒「なるほど」
私「うん。時速40kmは1時間で40km進むよってことでした。じゃあ分速50mはどういうことだろう?」
生徒「1分で50m進むってこと?」
私「いいじゃん、その通り。さて時速40kmの車が5時間走ると何キロメートル進みますか?」
生徒「・・・」
私「1時間で40km進むんだよね?5時間だと、それを5回繰り返すってことだから・・・」
生徒「40×5で200kmか」
私「その通り。じゃあ今度は逆ね。時速40kmで320km走りました。何時間走ったでしょう?」
生徒「・・・」
私「1時間で40km進むということは、逆に言えば40km進むには1時間かかるということだ。320km進むためには40kmを何回繰り返さなきゃいけないだろうか?」
生徒「あ〜320÷40で8か」
私「そう、なので8時間かかるってことだよ」
というような説明をします。
公式はできるだけどうしてそうなるのかを理解させます。理解した後に暗記するのは全然良いです。でも理解したならいつでもすぐ考え出せるので、暗記する必要がないことが多いです。
ポイント③発想に至る理由を説明する
いきなりこの問題はこういうやり方をするんだよ、と説明してしまうと、算数がパターン暗記科目になってしまいます。ある程度パターン暗記科目なのは間違いないですが、出来るだけ覚える量は少なくしたいですね。パターン暗記に頼りすぎるとパターンを忘れた時には全く解けなくなってしまいますから。
なので、なぜそういう考え方をするのか、発想の切り口みたいなものを教えると良いです。そうすると色んな問題に使える武器を手に入れることができます。
例えばこんな問題があります。
「最初兄の所持金と弟の所持金の比は14:7でしたが、兄が弟に420円あげたので、4:5になりました。最初の兄の所持金は何円だったでしょうか。」
この問題の肝は、所持金を受け渡しても、受け渡す前と後とで、兄と弟の合計金額は変わらない、ということです。そこに着目すれば、受け渡し前と受け渡し後の比を揃えるという発想になります。この問題の解説はここでは置いておいて、じゃあどこから説明するかというと、なぜ受け渡し前と後とで合計金額が同じことに着目するか、からです。
その答えは、「2人の間で何かをやりとりする問題では、やりとりする前と後とで変わらないものを見つけるとうまくいくことが多いから」です。
2人、と言いましたが、ものでもありえます。ビーカーや箱などですね。2箱の間で中に入っているものをやりとりする問題などです。
この説明をするか否かは些細な違いに見えますが、これは大きな違いです。
「2人の間で所持金を受け渡した問題では比を揃える」
と覚えると、もうこのタイプの問題にしか対応できません。
でも、
「何かをやりとりした場合は変わらないものに着目するといいかも」
と覚えておくと、いろんなタイプの問題で、この考え方が適用できないか試すことができます。つまり汎用性のある武器を手に入れることになるのです。
以上、私が教える中で、これは生徒の理解に良い効果を与えているなと感じているものをご紹介しました。一度試してみてください。
家庭教師をご希望の方はプロフィール記載のgmailにご一報ください。訪問エリアは東京・千葉・埼玉・神奈川です。オンライン指導もしています。