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今回は国語の文章を読むのが遅い子への対策についてお話しします。
「テスト中に国語の時間が足りなくなる。これは読むのが遅いからだ。どうしたら読むのが速くなりますか?」というご相談はめちゃくちゃ多いです。
こういう状況の時に、まず冷静に検討してほしいのが、本当に読むのが遅くて時間が足りなくなっているのか、ということです。
僕の指導経験上、本当に読むのが遅くて時間が足りなくなっている子はあまりいませんでした。
問いを解くのに時間を使いすぎ、というケースが多かったです。読みの精度が甘いので、選択肢を選ぶのに時間がかかりすぎたり、抜き出しの問題で抜き出すべき箇所を探し続けていたずらに時間を使いすぎたり、というケースですね。
一方で、本当に読むのが遅くて時間が足りなくなっている子も、少数ながらいました。子供の読むスピードが遅いですと相談してくださった方の中で、5人に1人もいないくらいの割合です。
読むスピードが本当に遅いのか、測定すべし
なので、一度、本当に読むのが遅いのか、測定して欲しいのです。僕自身、いろんな学校の過去問を、時間を測りながら解いてきています。それも読むのにかかった時間と、問いを解くのにかかった時間とを分けて何度も測ってきました。その経験からすると、多くの学校では、大人が読むのにかかる時間の1.5倍程度までは許容されている学校が多いです。もちろんこれは学校によって違いますよ。やたら文章の長い読解問題を出題したり、迅速な処理速度を求める特殊な学校もあります。1.5倍というのは、あくまで一般的な学校の場合の話です。
具体的には、大人、ここでは中学受験の親御様のような、教養のある大人をイメージしていますが、その読むスピードが1分間に600字程度。なので子供の読むスピードとしては1分間に400字程度あれば、読むスピードとしては問題ありません。
ということで、一度測定してみて欲しいのです。たとえば、塾の国語のテキストで、まだ子供が読んでいない文章を取り出してきて、まず親御様が時間を測りながら読んでみる。特に速く読もうとか思わず、自然体で読んでください。そしてその時間を1.5倍して、子供用の制限時間を作り、その時間内に子供が読み切れるか確かめてください。
ここで注意点は、時間を測っていることが子供にバレると、子供はいつもより速く読もうとするので、時間を測っていることは隠して読ませてみてください。
それで、制限時間内に読みきれず、本当に読むスピードに問題がある、となった時の対策方法を今からお話しします。
読むスピードが遅い子への対策
対策ですが、精読をする、ということに尽きます。読むスピードを直接的に速くするような訓練はしないです。というのも、読むスピードが遅い子というのは、結局文章の意味をつかめていないことが多いです。語彙が少なかったり、あるいは、主語述語の関係をつかめていなかったり、具体例とまとめの部分を区別できていなかったりと、さまざまな要因がありますが、文章の意味をつかめていない。こういう状況で目先の読むスピードだけを上げても意味ないのです。読み飛ばしまくり、読み違いまくりの読み方になってしまいます。
ということで、まずはじっくり精読をして、文章を正しく理解できるようにします。そして意外かもしれませんが、文章を正しく理解できるようになれば、自然と読むスピードは一般的な水準まで上がってきます。ということで、読むスピードを上げるには、精読を練習するに尽きる、ということになります。
では、「精読をする」と一口に言っても具体的にどうするか、ですよね。読むスピードが本当に遅い子の精読の能力というのは、読書するだけ、あるいは読解問題を解くだけ、ではなかなか上がりません。やはり大人の手助けが必要です。家庭教師を雇っても良いですが、親御様に伴走できる時間があるなら、親御様でも十分効果を上げられると思います。
方法としては、子供と一緒に読解問題の文章を読みます。数段落ごとに一旦読むのを止めて、子供にとって難しそうな文を取り上げて、どういうことか説明させ、意味がわかっているか確認します。これを繰り返します。その過程で、知らない語彙や、主述関係のわかっていない箇所、意味を取り違えている箇所などが判明しますので、都度教えます。物語文であれば、子供がまだ知らない感情や経験が出てくることもあるので、親御様の実体験に即して教えてあげます。ひたすらこれを繰り返します。
これだけで十分なことが多いですが、もし親御様が国語が得意ならば、文章を塊で読む訓練もやってあげると良いです。これは意味段落で分けるということではなく、説明文なら、具体と抽象を意識することになります。ここからここまでは具体例で、そのまとめがこの段落になっている、とかです。複数の段落が一つの段落にまとめられるような段落レベルの具体と抽象の関係もありますし、複数の文が一つの文にまとめられるような文レベルの具体と抽象の関係もあります。そういうまとめの部分に出会ったら、これはどこからどこまでをまとめていると思う?と子供に聞いてあげると良いです。
また、物語文では、主人公の気持ちが変化した部分を意識することになります。子供と文章を読んでいる際に、主人公の気持ちが大きく変化した出来事や他の登場人物のセリフがあったら、「今読んだ部分で主人公の気持ちが変化した部分があったけど、どのあたりかわかる?」と聞きます。そしてその前後でどういう気持ちからどういう気持ちに変わったかを聞きます。このように、気持ちの変化とそのきっかけの出来事を意識することを訓練します。
こういう訓練を通して、文章を塊で読めるようになると、読むスピードはさらに向上します。ただ、この塊で読む訓練は、ある程度の国語力が伴走者に必要なので、可能であればやってあげるという位置付けで良いです。一文一文をしっかり読めるようになるだけでもかなり読解力が上がり、それにつれて読むスピードも上がります。
ということで、読むスピードを上げる方法を説明しました。ここで、最初の方の話を思い出してみてください。国語で時間が足りなくなる子は2パターンに分けられると話しました。読みの精度が甘くて問いを解くのに時間がかかるケースが1つ目、本当に読むのが遅いケースが2つ目。
で、ここまで、この2つ目の、本当に読むのが遅いケースに絞って読むスピードを上げる方法を話しました。精読の練習ですね。で、実はこれ、1つ目のケース、つまり、読みの精度が甘くて問いを解くのに時間がかかるケースの対策にもなっているんです。1つ目のケースも読みの精度が甘いというのが根本の問題なので、その対策は精読の練習をする、ということになります。
ということで、国語の時間が足りなくなる子は、精読の練習をすべし、ということになります。
時間感覚を鍛えるべきケースも存在する
ただし、最後に例外のケースを紹介します。読む能力はあるけど時間が足りなくなるケース、というも実は存在します。それは試験の時間感覚がわかっていないケースです。時間感覚とは、これくらいのペースで解けば時間内に間に合うな、という感覚です。
これがわかっていない子は、端的に言えば、読む能力はあるのにダラダラ読んでしまうとか、ダラダラ解いてしまうというケース。この場合は、試験の時間感覚を身につける訓練をします。
具体的には、模試、解いた模試でも良いですが、できればまだ解いていない模試の国語の問題を用意して、大問ごとに制限時間を設定し、それぞれの大問をその時間内で解くよう練習します。
大問ごとの制限時間を設定するのは親御様には難しいと思いますが、親御様がまず解いてみて、それぞれの大問にかかる時間を測定し、そのすべてに同じ倍率をかけて全体が模試の正規の制限時間になるようにすれば良いです。
例えば、親御様が制限時間50分の模試を解いてみて、25分で解けたとします。50分は25分の2倍なので、親御様がそれぞれの大問にかかった時間を2倍にして、子供用の大問別の制限時間とする、ということです。できれば、読解問題は文章を読む時間と問いを解く時間に分けて制限時間を設定すると、なお良いです。
ということで、国語の時間が足りなくる子の対策を一通り説明しました。伴走のヒントにしてください。
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